黒と赤は時としてフィーの苦手な色なのに、何故この真っ赤な扉を選んでしまったんだろう。
扉を開いた途端、海の匂いと似て非なる、潮の匂いがした。空気が生暖かく湿っている。明かりはついていない。物々しげな気配に怯みつつ、恐る恐る足を踏み入れると、なんだか靴の裏でぬるりとした感触がした。耳鳴りがする。自分の心臓が、ばくばくと鳴っているのを感じた。
ジャックの光るかぼちゃ頭が暗がりをわずかに照らすと、何か鋭い刃物のようなものが光を反射したように感じた。目を凝らすと、部屋の中心には斬首のための器具が置かれていた。鈍く光る鉄の刃に、わずかに赤いものが付着しているように見える。
その先には黒い闇がわだかまっていて幸か不幸かよく見えない。…見たくない。
「フィー。ここ、なんか危ない感じがしますよ。…僕の連れ、暗がりにしかいられないくせに怖がりだから、きっとここにはいない」
「ああ。引き返そう、ジャック」
かぼちゃ頭の2人は頷きあって、なんだかぬめる床に滑らないように気をつけつつも、急いで引き返す。ここにはもういたくない。
扉を無事に出て、後ろ手にそれを閉めるとき、微かに何かの笑い声が聞こえた気がした…
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